なぜそうなるか
宅配の布団クリーニングで事故が起きたら——厚生労働省は、ネットで申し込む事業者の中に「事業者に責任がある場合のみ賠償」とするところもあると書いていました
冬が近づくと、押し入れの奥から厚手の布団を出す家が増えます。しまう前に一度きれいにしておきたい、と思う人もいるでしょう。
ただ、布団は大きくてかさばります。自分で店まで運ぶのは、なかなか骨が折れます。
そこで目に入るのが、ネットで申し込んで、箱に詰めて送るだけのクリーニングです。家から出ずに済むのは、たしかに手軽です。
一方で、店の人と顔を合わせないまま預けることになります。戻ってきた布団に傷みがあったとき、話はどう進むのでしょうか。
厚生労働省は、まさにネットで申し込む宅配クリーニングについて、注意を呼びかける頁を出しています。国民生活センターからは、クリーニングの受け渡しについての見守り情報が出ています。
この記事では、その2つの頁とクリーニング業法の条文を、2026年9月26日の時点で読み、出す前に確かめておく点を並べます。どの店がよいか、料金がいくらか、といった話は扱いません。
・クリーニング業法は、処理方法の説明に努めることと、苦情の申出先を示すことを営業者に求めている
・賠償の考え方として「クリーニング事故賠償基準」がある
・ネットで申し込む事業者の中には、その考え方を採らないところもある
・賠償基準を使う店と使わない店がある
・賠償されても、買ったときの値段が戻るわけではない
読んだ資料に、布団という語はある?
布団のクリーニングについて、国は何か書いている?
厚生労働省の頁と国民生活センターの見守り情報に、「布団」という語は出てきませんでした。国民生活センターの見守り情報に載っている相談の例も、ジャンパーのものです。
ですから、この記事に並べるのは、布団にも当てはまりうるクリーニング全般の決まりです。手元の布団の場合にどうなるかは、この記事では判断していません。
そもそも、クリーニングで揉めやすいのはなぜ?
洗って返すだけなのに、なぜトラブルになるの?
厚生労働省の頁は、クリーニングの特性をこう書いていました。
クリーニングには、他のほとんどのサービスと異なり、消費者の目の前で行われないサービスであるため、トラブルが起きても原因の特定が難しく、解決困難な場合が多いという特性があります。
そのすぐ後に、法律の側の手当てが続きます。
このため、クリーニング業法は営業者に対して、利用者に対する説明の努力義務や苦情の申出先の明示義務を課しています。
クリーニング業法は、店に何を求めている?
法律で決まっていることは、あるの?
第3条の2の第1項は、説明についての条文です。
営業者は、洗濯物の受取及び引渡しをしようとするときは、あらかじめ、利用者に対し、洗濯物の処理方法等について説明するよう努めなければならない。
第2項は、苦情の申出先についての条文です。
営業者は、洗濯物の受取及び引渡しをするに際しては、厚生労働省令で定めるところにより、利用者に対し、苦情の申出先を明示しなければならない。
第1項は「努めなければならない」、第2項は「明示しなければならない」と、言い方が分かれていました。
事故が起きたとき、誰が補償する考え方になっている?
配送の途中で傷んだら、クリーニング店のせいにはならないの?
その考え方を、頁はこう書いていました。
洗濯物に事故が発生した場合は、事故の原因がクリーニング作業以外の工程(保管や配送など)であっても、その工程にクリーニング業者の支配が及ぶものとみなし、クリーニング業者が被害者に対して補償するという考え方が採用されています
ただし、同じ頁には、ネットで申し込む事業者についての一文もありました。
インターネット等を利用する事業者の中には、事故発生時の賠償において上記の考え方を採用せず、事業者に責任がある場合のみ賠償を行うという取扱いを定めているものもみられます。
そのうえで、使う側への呼びかけで頁を結んでいました。
インターネット等を利用するクリーニングのサービスを利用するにあたって、苦情対応や事故賠償等の取扱いに関して、十分に確認を行っていただきますよう、よろしくお願いします。
賠償基準は、どの店でも使われている?
賠償基準があるなら、どこに出しても同じ?
見守り情報の助言は、こうでした。
「クリーニング事故賠償基準」を使用してトラブルの対処をする店舗もありますが、使用していない店舗もあります。利用する店舗のルールを確認しましょう。
どの店が使っているかの目印は、注記のほうにありました。
*「クリーニング事故賠償基準」は、Sマーク(「クリーニング業に関する標準営業約款」の登録店)、LDマーク(クリーニング生活衛生同業組合の加盟店)のある店舗が使用しています。
賠償される場合の額についても、ひとこと添えていました。
「クリーニング事故賠償基準」に基づき賠償される場合は、購入時からの経過月数などが勘案されるので、購入時の金額が戻ってくるわけではありません。
3つの資料を並べると
| 確かめる点 | 資料が書いていること |
|---|---|
| 処理方法の説明 | 営業者は受取・引渡しの前に説明するよう努める(クリーニング業法第3条の2第1項) |
| 苦情の申出先 | 営業者は受取・引渡しの際に明示する(同条第2項) |
| 事故の補償の考え方 | 賠償基準は、保管や配送の工程でもクリーニング業者が補償する考え方(厚生労働省) |
| ネットで申し込む事業者 | その考え方を採らず、事業者に責任がある場合のみ賠償とするところもある(厚生労働省) |
| 賠償基準を使う店 | Sマーク・LDマークのある店。使わない店もある(国民生活センター) |
表の右の列は、各資料の文を短く言い換えたものです。元の文は、上の各節の引用で確かめられます。
よくある質問
布団が傷んで戻ってきたら、いくら戻りますか
国民生活センターは、賠償基準に基づく場合は購入時からの経過月数などが勘案され、購入時の金額が戻るわけではないと書いていました。布団の場合の具体的な額は、この記事では確かめていません。
受け取ったあと、いつまでに言えばよいですか
国民生活センターの相談例では、7カ月前に出した服について店が「6カ月も過ぎてから苦情を言われても」と答えていました。何か月までなら受け付けるかの線は、読んだ資料には書かれていませんでした。
困ったときは、どこに相談できますか
国民生活センターの見守り情報は、お住まいの自治体の消費生活センター等への相談を案内し、消費者ホットライン188の番号も載せていました。
この整理が変わる条件
- 厚生労働省や国民生活センターの頁が書き換えられた場合(本記事は2026年9月26日に読んだもの)
- クリーニング業法が改められた場合(第3条の2は e-Gov 法令検索で読んだ)
- 申し込む事業者が、独自の規約で賠償の取扱いを定めている場合(厚生労働省の頁が、そうした事業者があると書いています)
・店は処理方法の説明に努め、苦情の申出先を示すことになっている
・賠償基準は、配送の工程も含めて業者が補償する考え方
・ネットの事業者には、責任がある場合のみ賠償とするところもある
・賠償基準を使う店と使わない店がある(目印は Sマーク・LDマーク)
・賠償されても、買ったときの値段は戻らない
出典
- 厚生労働省「インターネットで申し込む宅配クリーニングのトラブル」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124319.html
- 国民生活センター「クリーニング 受け渡し時には必ず状態を確認しましょう!」(見守り新鮮情報 第476号・2024年2月20日) https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen476.html
- クリーニング業法(昭和25年法律第207号)第3条の2(e-Gov 法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000207
出す前に、申し込む事業者の規約で、苦情の受付と賠償の取扱いを確かめてください。
当方が上の出典を引いて確かめた日: